本棚にある漫画を少し【Wathematica Advent Calendar 2021】

Wathematicaアドカレ2021/12/20の担当をさせて頂くこまこまです。今回紹介させて頂きたいテーマは個人的に所有している漫画(本も少し)です。学術サークルでのアドカレの記事ですが話すネタがないので自宅の本棚にあった漫画を紹介させて頂きたいと思います。はっきり言って手抜きです。本当に申し訳ありません。しかしWathematicaに入るような勉強好きな諸君は漫画をあまり読んでこなかったと思うので(決めつけです)せっかくのアドカレですから息抜きも学んでいただきたいとの思いで執筆させて頂いた次第です。一応学術サークルの記事として投稿する立場であるため理系っぽいことを混ぜていきたいと思いますがあまり期待せずに軽い気持ちでこの漫画面白そうって思いながら読んで頂けると幸いです。

 

① 聖☆おにいさん / 中村光 著

知っている方も多いと思いますが最初に紹介させて頂きたい作品は「聖☆おにいさん」です。「聖☆おにいさん」は現在連載中のギャグ漫画なのですがジャンルとしては日常系/ほのぼのコメディでも登場人物は全く日常的ではありません。なんと目覚めた人ブッダと救世主のイエスが立川のアパートでバカンスを楽しむという内容です。そんな彼らも立場としては何者にも代えられない存在でも普通の成人のように演じさせるのがこの作品の妙です。やっていることと言えば二人で遊園地に行ったり、買い物に出かけたり、ごはんを作ったりと本当になんでもない出来事をこの二人がやってみれば一つ一つが特別な出来事のように思えます。それこそ初詣やクリスマスなど二人に大きく関連する行事を彼らがどう参加していくか、本当にいたら彼らはそうするのではないかと思えるくらいの納得感と満足感があります。次の「荒川アンダーザブリッジ」でも紹介しますが中村光作品は実際ある場所で特殊なキャラに日常をそのまま演じさせることでコミカルに準日常を描き出す面白さがあります。それを支えるのが中村光の温かいタッチの絵です。少し水墨画みたいに描くことでほのぼのした空気を感じ取ることが出来ます。実際見ていただきましょう。

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これは最新刊の表紙ですが、ブッダとイエスの表情が柔らかいことが分かると思います。この雰囲気のまま漫画も展開していくため億劫なときに手助けとなると思います。「聖☆おにいさん」は少し宗教の事前知識(ブッダは苦行をしていた、イエスは奇跡を起こせるなど)があるため最初は戸惑うかもしれませんが知識がなくても面白い上に分かってきたらさらに面白くなるような作品です。

 

② 荒川アンダーザブリッジ / 中村光 著

荒川アンダーザブリッジ」は先ほど紹介した「聖☆おにいさん」と同じ作者である中村光が「聖☆おにいさん」を連載する前に連載していたほのぼの系/ギャグ漫画です。ブッダやイエスと違って今度は金星人と自称するニノという少女、それを取り囲むクセの強い多摩川河川敷の住人に対し主人公である市ノ宮行がつっこみを繰り広げていくという内容です。そんな常識人ぶっている行も市ノ宮グループの御曹司であり、人に借りを作ることが出来ない体質(借りを作ると喘息の症状が出る)など当然普通ではない側面を持っています。御曹司である行が多摩川河川敷にいる理由もニノに命を助けてもらった借りを返さないと気が済まないためニノの「私に恋をさせてくれないか?」という願いをかなえるためだけに河川敷に住むことになるというピュアな一面も持っています。しかし「聖☆おにいさん」と違う点はそれぞれの登場人物が非常に謎めいているという点です。例えば河川敷の村長を名乗る河童(河童の恰好をした人語を操る謎の存在)や常に黄色い星型のマスクを装着している星など素性をとりあえず説明してほしいキャラでもツッコミ一つで話が進んでいきます。またヒロインのニノも金星人を名乗っているが本当に金星人なのか?だとしたらなぜ河川敷にいるのか?などの疑問が湧いていきますがテンポのよいギャグで疑問を受け流され、忘れたころにその伏線を回収していくため最後まで作品に引き込まれながら読むことが出来ます。時にはシリアスな、時には切ない場面もあり非常に魅力的な作品です。

アニメもおすすめなのですが特にop1がユニークで楽しいです。op1とアニメ1話の公式youtubeのリンクを貼っておくので是非視聴してみて下さい。リンク切れだったら申し訳ございません。

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③ BEASTERS / 板垣巴留 著

この「BEASTERS」という作品は2019年にアニメ化もされており、主題歌がYOASOBIの「怪物」であることも話題になった作品であるため知っている人も多いかもしれません。ジャンルとしては学園ものに含まれるのでしょうが、なにより特質すべき点はキャラクターが人ではなくそれぞれが人以外の動物であるという点です。主人公であるレゴシはハイイロオオカミであったりライバルのルイはアカシカであったりします。「BEASTERS」の世界で重要な要素は肉食獣と草食獣の二項対立的構造です。我々の価値観では肉食獣は本能のままに草食獣やその他の被食動物を食べる訳ですが「BEASTERS」ではその動物たちが我々人間と同じように文明を発展させています。その円滑な社会運営のために「肉食獣は動物を食べてはいけない」という法律が非常に意義を持つ訳です。人間社会でいう殺人の違法性に当たる法律ですが肉食獣にとっては想像以上に耐えがたい社会でもあります。肉食獣だけではなく、草食獣にとってもたとえ法律で守られているとは言え、肉食獣に比べ圧倒的に劣る体格、体力と肉食獣に対する逃避本能に悩まされるという問題を抱えながらそれを隠しつつ両種族は共存しています。主人公であるレゴシはチェリートン学園の高校生として社会のルールを忠実に守りながしたたかに学園生活を送るのですが学園で起きた殺獣事件を中心に恋愛、友情、はたまた衝突を経験しながら成長する物語です。哲学的には動物の本能は自由とみなされない(人間においても食べたいから食べるや眠いから寝るは真の自由とはみなされないようです)のですが人間社会を動物に置き換えることで社会の不自由と自由の対立をうまく描き出しておりそこに感銘を受けました。彼らを通じて我々の他人とのとらえ方を考えさせられ非常に面白いのでおすすめです。

 

④ 四月は君の嘘 / 新川直司 著

少し青春漫画にも触れておきたいと思います。「四月は君の嘘」は広瀬すず山崎賢人が実写映画の主演を務めたことから知っている方も多いと思いますが、この作品は漫画を第一に推したいです。ジャンルは音楽/青春漫画ですが、何といっても音の表現が非常に素晴らしいです。実際見て頂きましょう。

ピアノの神童として有名だった有馬公生は母の死をきっかけに自分の弾くピアノの音が聞こえなくなります。もうピアノを表舞台で弾くことはないだろうと考えていた公生ですがそこにバイオリニストの宮園かおりと出会います。このシーンはかおりが公生にコンクールの伴奏を頼んで共演しているが最初は好調でも弾いていく内に音が聞こえなくなるシーンです。

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そんな中なんやかんやして(極力ネタバレをしたくないという配慮です)伴奏を続けることが出来ます。

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そしてクライマックスでのシーンがこちらです。

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いかがだったでしょうか?音を漫画で表現することは大変難しいように思えますが、音符を使わずに真っ黒な背景に水面が揺れる様子や光で音を表現するところに何度読み返しても感動します。モノクロな漫画を利用してコンクール会場の荘厳な雰囲気を描き出せることに漫画のすばらしさを再認識させられます。巻数も少なく終わり方もきれいなのでおすすめです。

 

⑤ チ。-地球の運動について- / 魚豊 著

「チ。-地球の運動について-」と次に紹介する「プラネテス」は少し理系の話題を含んだ作品です。この作品は2020年から連載を開始し「マンガ大賞」2位や「このマンガがすごい!2022」2位など様々な賞に選出されている作品です。15世紀ヨーロッパを舞台に異端審問に苛まれながら地動説を提唱していく者たちの物語です。フィクションなのですが異端審問官による拷問などが生々しく心が痛くなります。それでも真理を追い求めようとする執念に物理科として見習いたい部分でもありますがどうしても体を張る勇気はありません。どこから来るのでしょうね、本当に。

少し天動説と地動説について補足しますと、何も異端審問官といえども天動説(これにも種類、歴史があり発展していった理論なのですが)がまるっきり現実世界の天体の運動からかけ離れている理論であったのなら物理学において大事な運動の予測が出来ないためむやみに採用できるはずありません。しかし本当に地球を中心に惑星や太陽が円軌道を描くような理論であれば実際の天体の動きとは異なってしまいます。しかし過去の科学者は地球を中心にかつ円軌道のみを使って軌道を再現したいという思いから周転円、離心円、エカントといったさまざまな軌道、位置を複雑に組み合わせることで何点かを除いて見事に再現することが出来ました。その正確さ、観測器具の精度などから天動説を覆すことが難しかった訳です。そもそも物理学的には運動は座標変換可能ですので地球中心に記述しても問題ないわけであって天動説はあながち間違いとは言えません。天動説にも科学的(どちらかと言えば幾何学的)発展があったと思うと当時の科学者の頭の良さには舌を巻くばかりです。

 

⑥ プラネテス / 幸村誠 著

この「プラネテス」という作品をご存じでない方の方が多いと思います。この作品に1999年から2004年までモーニングにて連載されていた作品でモーニングは現在「宇宙兄弟」を連載している雑誌でもあります。そんな「宇宙兄弟」の先輩とも言える、宇宙を舞台とした作品です。2070年代、人類が当たり前のように宇宙旅行、資源採掘が出来るようになった社会でスペースデブリが大きな問題でした。これにより宇宙事故が多発していたためそのデブリを掃除する仕事に主人公の星野八朗太は就きます。自分の宇宙船を所有したいという夢を持ちながら自分の社会的地位の低さにも悩まされるヒューマンドラマです。この作品は近未来が舞台であり、本当にこのようなことが起こるかもしれないという期待、それからその陰に潜む人々の葛藤はいつの時代も変わることがないだろうと思わせる、ある種の感傷が込み上げてくるような作品です。

 

⑦ ハイキュー!! / 古舘春一 著

最後にジャンプのスポーツ漫画を代表する「ハイキュー!!」を紹介したいと思います。「ハイキュー!!」は高校バレーを扱ったスポーツ漫画なのですがその良さはどの高校の選手も魅力的であるという点です。性格の悪い敵キャラがいるわけではなく、また絶対的エースが超能力じみた力で他を圧倒するわけ(牛島若利というキャラは別として)でもないのでフェアな気持ちでどの高校も応援できます。何より高校ごとに特色が違うので推し高校なんかもあったりします。どの選手も純粋にバレーが好きでバレーに真摯に打ち込む姿がかっこいいです。何よりバレーの躍動感を漫画で表現できる古館春一の画力に驚かされるばかりです。

 

いかがでしたでしょうか?正直面白くなさそうと思ってもそれは僕の紹介の仕方、ひいては僕自身の国語力に大いに問題があると思われるので是非読んで頂けると面白いと思えるものばかりだと思います。他にも面白い作品、糧となるような作品がたくさんあるので勉強の息抜きに読んでみるとこの先の勉強にもためになると思います。